実用金属材料は、他の材料と比較して強度・耐熱性・電気伝導性・圧延性に優れていて、
加工(塑性・切削・溶接・表面処理)が容易にできるのが特徴です。科学技術の進歩に伴い、機器装置に要求される機能的要求からその特質は進歩し続けています。その中でも溶接工学における基礎的考え方は重要になっています。
溶接工学は金属材料を接合する技術分野であり、金属の特性を把握して対処せしなければなりませんが、それぞれの金属における溶接条件 や溶接機器についてはさまざまとなり、ここでは「溶接」に対する金属材料の特質を、理解することを目的として解説をしています。
※解説を行っていますが、すべての溶接法に「こだま製作所」が対応しているわけではありませんので、ご了承ください。
「こだま」の溶接技術は、技術情報から
化学、機械、建築、電気、土木、造船などの工業分野において金属材料を使用する分野では、溶接技術は不可欠なもので、溶接を行なおうとすれば、まず使用する金属材料の特質を把握しておく必要があります。
金属材料は強靭性、展延性、耐食性など優れており、金属結合をする金属材料そのものと、結合させた合金の用途は幅広くその特性を合わせて使用されています。
用途 | 分類 | 構成・特徴 |
溶接構造用材 | 低炭素鋼(軟鋼) | 鋼鉄のうち、炭素含有量が0.02%~0.25%のもの |
中炭素鋼 | 鋼鉄のうち、炭素含有量が0.25%~0.6%のもの | |
高炭素鋼 | 鋼鉄のうち、炭素含有量が0.6%~2.14%のもの | |
低合金鋼・高張力鋼 | 軟鋼をベースに銅、ニッケル、クローム,Cr,ニオブ,モリブデン,タングステンなどの合金元素を微量添加して強度を高くした構造用鋼 | |
高合金鋼 |
鉄と炭素以外の合金元素を、一定量以上含むもの。炭素、ケイ素、マンガン、リン、硫黄を規定量以上含む合金、または、その他の元素を一定量以上含有するもの。 ステンレス鋼も高合金鋼の一種で、高張力鋼や工具鋼の一部も高合金鋼に分類さる。 |
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機械構造用材 | 強靭鋼 | 中炭素鋼に、ニッケルやバナジウムを入れると磁靭性を増し、クロムやモリブデン、タングステンを加えると硬さが増し、更にマンガン、ケイ素を標準以上に高くすると強靭な鋼になる。 |
鋳鉄 | 鉄、炭素およびケイ素を主成分とした合金で、炭素の含有量が2.1%以上のもの。 鋳鉄は炭素の状態によって、ねずみ鋳鉄、白鋳鉄、まだら鋳鉄の3つに大別されている。 | |
耐熱材 | ステンレス鋼 | クロム含有量が 10.5 %以上、炭素含有量が 1.2 % 以下の鋼と定義されている |
ニッケル系材 | 鉄に36 %のニッケルを加え、微量成分として、マンガンおよび炭素が含まれたもの | |
コバルト系材 | コバルトは,ジェットエンジンやタービンなどに利用されるニッケル基超合金に添加されるほか、コバルト基超合金も利用されている。一般に、コバルト基超合金はニッケル基超合金に比べて高温強度が低いが、近年、Co-Al-W3元系による立方体 形 状の微細な析出物が均一に分散した組織が形成される事が認されさらに開発が行われている。 | |
耐食材 | 低合金耐食材 | 炭素鋼をベースに、数パー セント以下の合金元素をい くつか組合せて添加し、腐食に対する抵 抗性を向上させた鋼材 |
ステンレス鋼 |
クロム含有量が10.5 %以上、炭素含有量が1.2 %以下の鋼と定義されるが、用途によって多様なステンレス鋼が開発されている。その種類は、耐食性の高い鋼種、高強度な鋼種、磁性を持つ鋼種、非磁性の鋼種、極低温でも脆化しない鋼種などがある。主要金属組織をもとにして「オーステナイト系ステンレス鋼」「フェライト系ステンレス鋼」「マルテンサイト系ステンレス鋼」「オーステナイト・フェライト系ステンレス鋼」「析出硬化系ステンレス鋼」の5つで大別されている。 |
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ニッケル合金 |
ニッケル成分比が50%以上ものを一般的にニッケル合金といいます。その種類は数千とも言われ、代表的なものではニッケルクロム、ニッケル鉄、ニッケル銅などがあります。用途に応じ、材質選択が行われます。 |
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銅合金 | ||
アルミ合金 |
・2000番台ジュラルミン Al-Cu系合金 ・3000番台Al-Mn系合金(加工性、耐食性、強度が良好) ・4000番台Al-Si系合金(耐摩耗性が良好) ・5000番台Al-Mg系合金 ・6000番台Al-Mg-Si系合金 強度、耐食性が良好 ・7000番台Al-Zn-Mg系合金・Al-Zn-Mg-Cu系合金 (高強度材でありCu系はアルミ合金中の最高強度) |
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チタンジルコニウム合金 | Ti,Zr合金 冷間圧延(低温での加工性も良く、強度も高い) | |
電気抵抗合金 | ニッケル合金 | ー |
工具材・耐摩耗材 |
炭素鋼 | 主成分の鉄と炭素以外に、ケイ素・マンガン・リン・硫黄・銅を含む鉄と炭素の合金で、炭素含有量が0.02%~2.14%までの鉄鋼材 |
高速度工具鋼 | 鉄をベースとした、タングステン・クロム・バナジウム・モリブデンなどを加えた合金工具鋼 | |
高クロム系耐摩耗材 | 高硬度炭化物を有し、擦れ摩耗に最も適した材質 | |
高靱性耐摩耗材 | 微量合金元素を添加し、高強度と高硬度と高靭性が整合され、良好な機械加工特性を有し、エンジニアリング上広い適用に有利 | |
マルテンサイト系耐摩耗材 | 13%のクロムを含むSUS403・SUS410を代表とした、常温でマルテンサイトの組織を持つステンレス鋼 | |
ステライト | コバルトを主成分とし30%程度のクロム、4~15%のタングステン 耐熱・耐食・耐摩耗環境を同時に実現でき非常に融点が高い |
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焼結合金 | 複数の金属を微細な粉末の状態で圧縮成形(3~8t/cm2)し、この粉末成形体を溶融点以下の高温(1150~1300℃)に保持することにより焼結(金属粒子の拡散結合ならびに合金化)して焼き固める粉末冶金法(ふんまつやきんほう)で製造 | |
軸受け材 | 高炭素クロム軸受鋼 | 軸受鋼は、0.95~1.10%程度の炭素(C)に耐摩耗性を向上させるため、0.90~1.60%程度のクロム(Cr)を含む。また、少量のマンガン(Mn)やモリブデン(Mo)を添加することで、焼入れ性を向上させている。 |
ステンレス鋼 |
クロム含有量が 10.5 %(以上、炭素含有量が 1.2 % 以下のと定義される。 |
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バネ材 | バネ鋼 | 高炭素鋼 |
非鉄バネ鋼 | ステンレス鋼等 | |
貴金属材 | 接点材料 | 銀 |
宝飾用地金素材 |
金、銀、白金、パラジウム |
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貴金属ロウ材 | 銀、パラジウム |
表にある構造用・耐食材および耐熱材は構造物などに用いられ、良好な溶接性を求まられますが、炭素含有量の多い、中・高炭素鋼および機械構造用材は溶接方法の選択幅が狭くなります。溶接方法としては、熱間溶接法のアーク溶接、ロウ付け、サブマージアーク溶接となります。また、炭素含有率を下げたものが低合金鋼で、添加材合金元素としては Ni, Cr, Mn, Si, Mo, W, V, Co, B, Ti, Al などがあります。溶接方法は、ティグ溶接・抵抗溶接・レーザー溶接・電子ビーム溶接等、溶接範囲は広がります。
その他の材料は溶接性に対する考慮はあまり必要ありません。中でも鋳鉄は、熱間溶接法に加えて冷間溶接法のティグおよびミグ溶接などで予熱なし、または局部的低温予熱を行なって溶接を行います。溶接棒は純Ni、Ni-Feなどの延性のある合金心線の溶接材料を使用します。
耐食性を利用したステンレス鋼は多分野で広く使用されていますが、Niを加えたオーステナイト系ステン レス鋼は、耐食性・耐熱性ともに良好で、食器・医療機器等から構造物まで使用されています。溶接方法としては、ティグ溶接・抵抗溶接・レーザー溶接・電子ビーム溶接等、溶接範囲は広いです。
ニッケルの溶接性はステンレスに似ており、主に抵抗溶接・アーク溶接・レーザー溶接を用いて行われます。ニッケルは融点が1400度以上の高い耐熱性を持ち、伝導性も真鍮やステンレスより良く、耐食性も非常に優れているため、多様な合金として広く用いられています。ニッケルは溶加材としても優れており、ニッケル合金だけでなく鋳鉄の補修にも使用されています。
銅および銅合金の溶接は、ティグ溶接、ロウ付け、拡散接合、抵抗溶接、電子ビーム溶接などが用いられますが、その母材のもつ特性によって、溶接棒(使用する場合)の選定、および溶接施工法に十分留意する必要があります。
貴金属材における接合方法としては、一般的にロウ付けに限られます。通常、シルバーとゴールドはガスバーナーで、プラチナは酸素バーナーでロウ付け作業を行います。ガスバーナーの炎は1300℃、酸素バーナーは2500℃の高い温度になります。融点の低いシルバーや、細い線を使ったゴールドのロウ付けには、地金を溶かさないように温度調節をしながら作業を行います。